お前らそれキング牧師とかの前で言えんの?

コレが非常に気になったので・・・一部イイ話っぽく受容されてるけど違うんじゃね。

http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20150305/p2
「俺の爺さんは人間でなかった(奴隷だ)」「奴の先祖は戦わなかった。俺たちは違う」…米空母で黒人と先住民が、日本人に語った重い言葉(月刊「正論」)

一番問題だと思ったのは、ネイティブアメリカンと黒人を対置した以下の基本構図
 ・NAは徹底的に白人に抵抗戦争をして殆ど死に絶えてしまった、でも黒人は命惜しさに奴隷に甘んじた。
 ・日本人もNAも、黄色人種は誇りのために死ぬまで戦う、だから世界で「日本は」尊敬されている。

すごく既視感のあり過ぎる論理展開ですが、ここですっぱり抜け落ちているのが肝心な、米国に於けるマイノリティ権利獲得の流れ。
記事の前提じゃ、まるで黒人が怠惰な何もしない奴らみたいな話になってませんか。
そもそもマイノリティの権利認定の過程には、20世紀中頃の苛烈な 「黒人公民権運動」 があるわけです。
「奴の先祖は戦わなかった。俺たちは違う」
 お 前 ら、そ れ キ ン グ 牧 師 の 前 で も 同 じ こ と 言 え ん の ???
(主に、これを聞いて鵜呑みする人に向けて)

そう、NAの一個人氏が偏見を抱くのはいい、でもソレ読む方がそのまんま、黒人dis観と不可分なソレ受容しちまうのどうよ???
っていう話ですよ。

マイノリティ権利獲得に関しては無論NAも共闘したでしょうが、元記事みたいな杜撰な認識では逆に、公民権運動を主導したわけでもないのに、権利獲得したツラすんな、みたいな言い分さえ成立させようと思えば出来てしまう。
この点、自前で民主的政体を確立できず、敗戦後に米から民主主義と自由を『恵んでもらった』と言われる日本人にはより的確にヒットします。
(もちろん曲論です、元記事同様、そう言われて納得する奴がいたらおかしい)
記事筆者へ語った黒人士官の言葉は、そういう罵倒でなくとも、『自前で権利を獲得した誇り』と解した方が自然ではないでしょうか???


まあ正論記事は何というか、実に典型な正論話法だと思いました、パターン通り。
差別案件を扱うものの、問題発言をしているのは被差別側というのも彼等の大好物、歴史問題で子飼いの外国人に語らせるような。
(海外メディアは無視しても、そういう例外的な個人については針小棒大に持ち上げる)

民権獲得といった民主的、正統的な社会闘争は無視して、ともかく命のやり取りをすれば偉いという価値観、ソレが汎世界的だとの強弁。
(もし記事の見解が正しければ、黒人よりNAの方が評価が高いという価値観が広まっていそうなのに、そういう話はまるで聞かれません)
日本の立場が戦後強くなったのも高度成長以後で、経済力の高さが主因と見た方が余程自然です。

そもそも黄色人種枠でNAと日本人を同一視するなら、もっと立場の近い同人種が半島や大陸にゴマンといるでしょうに・・・。
『俺たち黄色人種はそんなことしない (キリッ)』

殺し合いしてない奴には権利がない、という発想も色々とアッチ界隈でよく見られる発想で、韓国は直接戦争してないから戦勝国ツラすんな、とか。
(それなら自力で民主主義を獲得してない日本は…以下略)
バリエーションとしては先日話題になった、女はガチで潰し合いする社会に出て来るな、男のオコボレを大人しく受け取れ、みたいな話も同根かな。
だいたい、命を惜しまず抵抗するのが尊い、と言う人ら、それを実践した韓国の安重根とかを何て言ってたっけ・・・。

オチとして語られる
『インチキアメリカ人なんかやってねーで、独立戦争しろ』て台詞で涙、というのも何だかねえ。
いや、既に20世紀半ばにやってるわけですよ、権利獲得闘争を、結果も出た。
これ以上奪われた国土を・・・みたいな話になると、日本で言えばアイヌや沖縄が独立国に…ぽい方向になっていくんだけど。
もっと現実的なケースだと、例えばアイルランド独立とか・・・。
独立どころか権利の要求すら否定しがちな正論界隈がシンパシー持っていいもんなのかどうか。
まあ、強烈な反米コンプレックスを抱きながらも、しかし米国の威信に乗っかって国内を抑える右派にとっちゃ、マイノリティの権利とか知ったっこっちやない方向で琴線に響くアンビバレントなのでしょうけど。